※注意※
以下にはネタバレが含まれますのでご注意下さい。今期のアニメも大多数が最終回を迎えました。
その中で個人的に最も感動したのは以前にも紹介した
ソルティレイです。
この作品はSF的な要素を売りとした作品でしたが、実質は世界観や設定に
穴や矛盾がかなり目立ちそういった面ではイマイチの作品でした。
その代わり最初から最後まであるテーマが貫かれていて、
その面では今期最高の作品であったと個人的には思っています。
それは
「親子愛、家族愛」というテーマです。
あらすじは記憶を失ったアンドロイドの少女
ソルティと
過去の事故で妻と娘を失った中年男性
ロイとが
様々な出来事を通して父親と娘という関係での絆を深めていくというものです。
最初はギクシャクしていた関係が、困難を乗り越える事によって
段々と本当の家族のようになっていく様は見ていて胸にこみ上げてきました。
ですが最終回、そのソルティとロイの間に別れが訪れます。
ソルティ達の住んでいる惑星(移民惑星)の監視コンピューターである
エイレネが暴走を始め、人類を抹殺しようとします。
エイレネと同回路を持った姉妹コンピューターであるソルティは
その暴走を止めるためにエイレネ(巨大な武装宇宙船に収められている)
のいる宇宙へと死を覚悟して向かう事を決意するのです。
そのソルティが宇宙へと向かう際のロイとのやり取りは非常に切実なものでした。
「ソルティ、宇宙へなんて行くな!!
お前が宇宙に行っても帰ってこられる可能性は殆ど無い、
破壊した破片がこの星に降り注いだらどうせ同じ結果になるそうじゃないか!!
だから行くな!!
そ、そうだ・・・みんなでドライブに行こうw
遊園地にも連れて行ってやる、行った事無かったよな?きっと楽しいぞ・・・
弁当も作ろう、今すぐ行こう、だから、だから帰るぞ!!」完全に取り乱したロイの言葉に、切なそうな表情をしながらも、
ソルティは自分がみんなを守るために宇宙に行く決意を伝えます。
するとロイは大人気なく、わめき散らします。
「だまれ、俺が行くなといってるんだから、行かなくていいんだ!!」
お前は俺の娘なんだ、だから親の言う事を聞いてくれ!!」ソルティはたまらずに涙をあふれさせ、
「うれしいです、機械の私なんかを娘って呼んでくれて・・・」そしてロイは滝のように涙をながし、情けなくうつ伏して絶叫します。

文字で表現すると、いい歳(40過ぎ)した親父が
何ともみっともない醜態を晒しているようにしか見えないと思います。
だが、それがいい・・・それが親としての偽り無き本音。我が子をほぼ確実に死ぬであろう場所に正気で送り出せる訳が無い。
己が半身とも言える存在を失う現実を受け入れられるはずが無い。
泣いてわめき散らして縋り付いてでも行かせまいと思うのが親です。
いい年の親父が、それもゴルゴ13のような態度を取っていた男が
愛娘を死地に行かせたくない一心で世間も外聞も糞もなく狂乱する。
その正気を失った行動にこそ、ロイの親としての愛情や
二度と家族を失いたくないという思いをひしひしと感じるのです。
かくしてソルティは宇宙へと向かい、自らを犠牲としてエイレネを破壊します。
一方のロイはソルティが帰ってくるのを5年過ぎた後でも頑なに信じて待ち続けていました。
それからさらに年月が過ぎ・・・ロイは親としての執念で宇宙飛行士となり、
宇宙空間でソルティを延々と探し続けているのでした。
そして、とうとう機能停止状態のソルティを発見するのです。
手足は吹き飛び、目に光は無く、ボロボロの状態で永い間孤独に宇宙を漂っていたソルティ。
そのソルティをロイはしっかりと抱きとめ、涙をこぼしながらこう呟きます。
「おかえり、ソルティ・・・」その言葉にソルティは僅かに力を取り戻し、震えるような声で答えました
「た・だ・・・い・ま・・・」
冷淡だった男を宇宙にまで駆り立てた、親としての執念、親と子の絆。
その全てがこのラストシーンに詰まっていたような気がします。
(もちろん、このシーンで私は耐え切れずに号泣しましたよ、ええ・・・)
男と女としてのつながりではなく、親と子としての繋がりだけに、
私としてはよりいっそう強い感動を感じたのもあるでしょう。
男女?の恋愛を(ドロドロと)描いたアニメ
「かしまし」では
殆ど感動しなかった私もこのソルティレイには完全に撃たれてしまいました。
選ばれた人間が体験する男女の恋愛ではなく、大抵の人間が生まれながらに経験する
親と子の関係、親と子の繋がり・・・そういったより普遍に近いテーマを
主軸として用いたことがこのソルティレイの勝因だったように思います。
本田氏が家族愛にやたらと拘っているように、やはり喪男ってのは
家族、家族愛というものに対して特別な感情を抱く傾向があるように思いました。
※追記※同じように親子愛、家族愛をテーマとしたアニメとして
「Z.O.E Dolores,i」という作品が過去にありまして、こちらも大好きでした。
私のアニメファンとしての経験なんですが、
むさい中年親父や老人なんかを主人公としたアニメ作品は
ヒューマニズム作品として優良な場合が多いように感じます。
主人公の年齢が年齢ですから青臭い話(恋愛)よりも、
しんみりとした家族愛なんかが映えるんでしょうね。
中高年が主人公だったり、非常に重要なポジションに置かれたりする作品は、
早々に切らないで根気良くチェックする事をオススメします。