イキガミという漫画が中々面白いので紹介します。
これは近未来日本を舞台としたヒューマンドラマもので、
この世界では
「国家繁栄維持法」という恐ろしい法が成立しています。
犯罪率の増加や自殺率の増加を抑える為として
「命の尊さ」を
国民に知らしめる為に、新生児1000人に1人の割合で体内に
時限式の致死性マイクロカプセルを注入し、その人が20歳までしか
生きられないようにするという
ロシアンルーレットのような法律です。
「自分が20歳で死ぬかもしれない」という恐怖感を持たせて
人生を真面目にいきようとする価値観を育てさせようとしている訳ですね。
このイキガミ1巻に出てくる
鴨井という青年の話は喪男の生き方にも関わる重い話です。
彼は高校時代に酷いイジメを受けて、
片目を失明しかけ、
タバコの火で毎日頭を焼かれた為に
頭部の3分の1をハゲに
されてしまうという地獄を味わいました。
それでも彼はその
イジメを忘れよう(憎しみを忘れよう)と
無抵抗を貫き、
学校を辞めざるをえなかったものの、地道に働き社会復帰しかけていました。
そんな矢先、自分が
「マイクロカプセル注入者」であることを
通知する
「逝紙(イキガミ)」が役所から届いたわけです。
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ボロ雑巾、生ゴミ、害虫、チンカス、便器、サンドバック、
存在と人格を完全に否定され続けて、殆ど廃人になりかけていたあの頃、
あの地獄からやっとの思いで這い上がり、ようやく自分を取り戻しかけたのに
それでも、まだぼくには苦しみが足りないっていうのか!!
いったいなんで僕なんだ、死ぬべき人間は他にたくさんいるじゃないか!!*******************************************************
そう狼狽して彼はイジメの主犯格だった面子に
復讐を誓うのです。
最初のターゲットは高橋という女性でした。
ここで注目すべきは
「虐めていた鴨井の事を全く憶えていなかった」という点です。
あれれ、これって喪男を糾弾する人間に似てますねw*******************************************************
え、誰だっけ?
あー居たねー元気だった?
卒業してから何してたの?(自分が虐めたせいで中退したことすら忘れてるw)
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これに切れた鴨井は彼女を暗がりに引き込みレイプします。
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学校中の笑いものにされ、知らない連中にまでボコられたんだ!!
お陰で町中が敵に見えて、外出さえ出来なくなったんだぞ!!あたし、そんなこと、憶えて、ないし・・・ふざけるな!!
あの十ヶ月間、お前らのせいで僕は何度も死に掛けた!!
その後の四年間もお前らの残像が頭に焼き付いて一向に離れない!!
この苦しみを忘れられてたまるか!!
こうして僕に犯されてるお前の姿もメールで流してやるからな、
僕という人間が存在していたことを、一生忘れられなくさせてやる!!*******************************************************
そして次のターゲットとして選ばれたのは下山という
美容師を目指しているDQNです。
此方で注目するべきは
「状況による態度の豹変」です。
これもまた喪男を糾弾するタイプの人間に多い気がするw鴨井は彼を地下駐車場に呼び込み、包丁を突きつけ睨みつけます。
そこで下山の取った行動は
「命乞い」でした。
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お、落ち着いて、悪かった、謝るよ、ヘヘw
俺、ホント反省して今は真面目にやってるんだ。
美容師目指して店で修行中でさ、
不器用だからハサミとか巧くつかえなくて毎日必死で練習しているんだw*******************************************************
そんな態度に切れた鴨井はカツラで隠している
焼け爛れた頭部を晒します。
そして下山の頭部にライターオイルを浴びせて
自分がされたと同じように頭部に火をつけようとしましたがそこで下山は咄嗟に
タックルをかまして鴨井に馬乗りになります。
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テメーみたいな害虫にゃ、その髪型がお似合いだ!!
四年も前の事を今更ウジウジいいやがって!!
みんなにボコられたのはテメーがアホだったからだろ!!(この発言も喪に対してよーく使われる手合いですねw)
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そう叫びながら鴨井を殴る下山ですが、鴨井の
渾身の包丁突きが
右拳に突き刺さり、指がほぼ切断状態になるという重傷を負わされ
無様に泣き叫びながら転がりました。
鴨井は積年の恨みを晴らし誇らしげにその無様な様を笑い飛ばします。
復讐を達したあと彼は死までの残り時間を当てもなく
フラフラとさまよい歩いていました。
すると、
イジメを受けて殴られている少年を目撃します。
鴨井はその少年に近寄り、こう言葉を掛けました。
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いつまでそうして、ボコられているつもりなんだ!!
いつか仕返ししてやる、それまではじっと我慢だ・・・そう思っているとか?
だけど、その日が来るまで生きていられる保障は無いんだ。
それに、仮に君が力をつけてやっと仕返しできるようになったとしても
あいつらはその頃には君のことなんて忘れてる・・・
そんな相手に仕返ししたって後の祭りなんだよ。
だからもし、風向きを変えたいなら今変えろ!!
どうせキレるなら今キレろ!!
どうせ戦うつもりなら今戦え!!*******************************************************
少年にその言葉を掛けた数十分後、
彼は誰もいない公園の木陰で
ひっそりと孤独に息を引き取りました。その後、鴨井から言葉を受けた少年はクラスで机をぶん回して
いじめっ子たちをボコり、結果としてイジメから脱っしたのです。
そして新聞への投稿で鴨井への
丁寧な謝辞のコメントがある匿名の
中学生から送られてきた・・・という顛末でした。
鴨井が出した結論
「戦うつもりなら今戦え!!」は
「パワーバランス論」「無抵抗と非暴力」ここで私が主張している事と共通したものでもあります。
復讐とは年月を重ねれば重ねるほど
「諸刃の剣」としての
側面が強くなってしまいます。
馬鹿にされたら
「その場で」馬鹿にしかえす。
殴られたら
「その場で」殴り返す。
これは現実でもネット上でも同じです。一見すると
不毛ですが、これが
最も怨恨を残さず、
最も被害が最小限で収まる手段である・・・私ははそう考えます。
そしてDQNが
過去の事をああも気にしないで生きていけるのは
屈辱を味あわされたら、その場でキレているからでしょう。
現実、ネット場所を問わずにね・・・まあ、現実では色々なしがらみもあって、
ベストな対応は必ずしも一様ではありませんが、
根本的には
「その場で戦う」というのは正しい選択であると思います。
そして
「無抵抗」や
「憎しみを忘れる」という事がいかに困難で
常人の度量を超えた行為であるかを理解しないこと、
「無抵抗という生き方を安易に美しいとする思想の恐ろしさ」を
鴨井の生き方は十分に示していると思います。
彼は
イキガミ(死)という
絶望を突きつけられて
暴走に走りましたが、
これが
失業、貧困、病気、離婚さまざまな
絶望が襲い来る現実において
どんなに絶望しても憎しみを再燃させない自信があると胸を張れる
人間が一体
この世にどれだけ居るのでしょうかね?いま、
現実でそこそこ落ち着いた状態だからこそ
「憎しみの連鎖なんて~」という呆けた
ノンポリ発言ができるのではと思うのです。
落ち着いているときに憎しみを忘れているのは簡単です。
本当に重要なのは絶望に伏しているときにそれを乗り越えられるかなのに。そして人は生きる上で一度も絶望に遭遇せずにいる事はほぼ不可能でしょう。
そのためにも
恨みを残しておく事はマズイのではないでしょうか?
余談ですが、モテナイ男問題(非モテというよりも喪男)は
モテ非モテというよりも
「イジメ問題」として見たほうが
より正しい見解が持てるかもしれません。
殆どの喪男は女性に愛されない事ではなく、容姿が醜いなどの
恋愛資本主義的な尺度をもってして
「虐められた、虐められている」事を恨んでいるからです。
よくこういう問題について理解が出来ないとのたまブロガーが居ますが、
モテる云々よりも「イジメ問題」という視点で見直してみては如何でしょうか?
※追記※某掲示板で上記の内容を逆手に取り
「掲示板でグチグチ言わないで現実で本人に切れろよ、クズ」と罵ってくる御仁がいますが、現実でも当人にキッチリ切れています。
我々がネット上でも切れているのは我々を
「グチグチしたクズ」と言っている
「あなた自身」への怨恨を残さない為に言い返しているのです。